iPhone最高の喜び
アンビエント音楽(Ambient Music)の先駆者、ブライアン・イーノ(Brian Eno)がミュージシャンでソフトウェア開発者でもあるピーター・シルヴァース(Peter Chilvers)と作ったiPhone用アプリ「Bloom」(10月5日リリース)に感動する。
タッチすると、スクリーン上の場所によって、ピアノ的鍵盤の透き通った高単音から、ドゥーンというベースたちが調音しているような低音まで発し、スクリーンにはその場所から水玉が拡がりフェイドアウトしていく。
低音はiPhoneのスピーカーではほとんど聞こえないので、できるだけいいヘッドフォーンかスピーカーシステムにつないで聴くべき。
Bang&Olufsenのヘッドフォーンで聴いたら、通奏低音のような音もはっきりし、本体だけで聴いたときとはまるで印象が変わった。
それぞれの音は徐々に弱まりながらも何回か再現し、パターンが現われ、ループして重なり合っていく。
重なり合っていっても決して汚くは聞こえないのがすごい。
ひとわたり終わったはずと思うとまたループが始まるが最初とは微妙に異なり生育発展(evolve)していく。
途中で手を入れればさらに分岐、変化する。
「アンビエント(Ambient)」 とは「周囲の」「環境の」というような意味だが、「環境音楽」と日本語にすると、どうもイージーリスニングの一種のように思われがちで、イーノがめざした、たとえば特定のモニュメントと分かちがたく結びついた音楽とか、その場所に音楽がアトモスフィアを積極的に意義づける、というような音楽思想、あり方の新しい意味が抜け落ちてしまう。
生育・開花を意味する「Bloom」には、演奏者と聴衆(じかに、あるいはオーディオを通して)という両端の軸ではなく、自分がきっかけを与えながらその場に生育していく音楽と環境を楽しみ共有するという画期的なものを感じる。
TAKAMI Toshio about
Bloom